伝統漢方専門老舗


                   
         
 
 


 チャイナビュー  No.319


      

      

       





昔から多くの様々な文化財を陳列している中国の博物館は、最新の技術が詰まっていて、日本の博物館の参考に
なります。規模や歴史が異なる中国の博物館をご覧になり、壮大な文化をお楽しみいただけます。

  
汗症の種類, またそれらの臨床上の意味

主な汗症は,以下の8種です
(1)表証の汗: 外邪の種類性質と正気の盛衰
表証をあらわす者で
汗の出ない場合は、外感寒邪が原因である
傷寒実証に属すことが多いです。 〈麻黄湯,荊防敗毒散等〉

汗の出る場合の多くは外寒風邪による太陽中風証に属しま
す。〈桂枝湯等〉

その他、外風熱, 衛陽虚弱、 外邪の重感 (外邪が体内に
封じ込まれた上からさらに外邪を感受する), などが原因と
なる表証にも汗出を伴うことがあります。もしも、 体質的に
衛隔が虚しているため肌表不固 (毛穴にしまりがない)となっ
ている人はさらに汗が出易いといえます。

(2)自汗 :日中、常に汗が出ていることを指します。
動けば汗が多く出て、汗が出た後は寒けがし, 神疲 (心身倦怠),
乏力 (体に力が入らない) 気短 (呼吸が切迫する)などの
症状を伴います。
原因は、気虚、衛陽不固によることが多いです。
〈気虚~四君子湯, 補中益気湯, 衛陽不固~玉屏風散,黄耆建中湯等>

(3)盗汗: 眠りに入ると汗が出始め、目覚めると汗が止まるのを盗汗と呼びます。
五心煩熱 (手, 足, 心部のほてり),
不眠, 頬紅, 口咽乾燥などの症状を常に伴います。
陰虚陽亢や陽熱亢盛が原因で陰液が蒸発して汗となったものです。
〈六味地黄丸加減等>

(4)大汗:汗が多量に出て、 津液の損傷が著しいことを指しています。
臨床上では、陽熱内盛によって汗がどんどん出てくるような実熱症や,
陽気欲絶 (陽気が絶えそうな程虚している)で津液が陽気に付随して
外へ出る (津随気泄)という重篤な場合によくみられます。
実熱症では、大汗の他に高熱が下がらない,煩渇飲冷,脈洪大などの
症状を兼ねます。 〈白虎湯等>
陽気欲絶,元気欲脱では, 大汗淋漓 (汗がしたたり、止まらない)に、
呼吸喘促, 神病気弱(精神衰弱),四肢厥冷などを兼ねます。 〈黄建中湯, 附湯等)
したがって,これを別名「絶汗」 「脱汗」といいます。

(5) 戦汗: 戦汗とは, 正邪が相争うためにあらわれる症状で, 疾病の転機を
意味しています。
まず全身に戦慄を覚え、続いて汗が出始めるのが特徴です。
もしも、汗が出た後熱が下がり、身体が涼しく、脈が静かに落ちつくならば、
それは邪気が去って正気が安らいでいることのあらわれです。
逆に, 汗が出ても煩燥がとれず、脈が疾病の急迫をあらわすようであれば,
邪気が盛んで正気が衰退している危険な状態を意味します。

(6) 頭汗: 頭部のみに汗をかくのは、上焦の邪熱あるいは中焦の
湿熱郁蒸に由来する場合が多いです。
上焦の邪熱では, 頭汗の他に, 舌苔黄, 脈浮数などを兼ねます。
〈 黄連解毒湯等〉
中焦の湿熱郁蒸の場合には、身重倦怠感, 小便不利, 舌苔などを
頭汗以外にあらわします。 〈六一散, 甘露消毒丹, 三仁湯等〉
大病の後や老人の気喘などにみられる頭汗の多くは、虚証に属します。
また、 重病の末期で額に突然多量の汗をかくのは,陽が虚して浮遊し,
そのため陰液, 津液が気に随って脱出していくという危篤証です。

(7)半身の汗: 右半身, 左半身,上半身、下半身のいずれかに偏って汗が
出る場合は, 営衛, 気血が失調し, それに風湿, 風痰,瘀血などを挟んで
経脈を阻滞することが主な原因です。〈十全大補湯,人参養営湯等〉

(8) 手足心部の汗: 汗の量が多くない場合は、生理現象です。
多量に汗が出,口乾喉燥, 便秘尿黄, 脈細などの症状を兼ねる場合
は、陰経の経絡における郁熱燻蒸が原因です。 (掌には手厥陰心
包経 足の裏には足少陰腎経が流注している。 郁熱薫蒸(こもっ
た熱が汗を出す)
過度の思慮が原因で心脾を損傷した場合に, 汗が多く出ること
があります。この場合には心胸部にのみ汗をかきます。 〈帰脾錠,
天王補心丹, 生脈散>

以上の8種の区別の他に、冷汗と熱を判別せねばなりません。
冷汗は, 衛気不足肌表不固に属すことが多く, 熱汗の多くは外
感風熱あるいは内熱迫に属します。


            書名  汗を問う   より抜粋