”正しい漢方知識”があなたの目をまもる


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なぜ、目は悪くなる?


目がかすむ、ぼやける、疲れる、痛い、ショボショボする、乾いてゴロゴロするーーこんな経験はありませんか。
それはやはり「目の使いすぎ」です。

 年をとれば、視力は減退し、まぶしい、ゆがむ、チカチカする、まぶたがピクピクするといった中高年に多い症状も出てきます。「老化」です。その原因を中医学(中国の伝統医学)や日本の漢方では「腎の衰え」=腎虚と考えます。中高年の「老化」はさけることのできない自然のなりゆきです。
でも、何とか「老化」を少しでも遅らせるアンチエイジング(抗老防衰)という考え方があります。

 目をいつまでもイキイキと輝かせ、目の不快な感じを取りのぞくにはやはり目に関する正しい知識をしっかりともち、日頃からの予防と養生、いわゆる未病対策が大切なのです。


 

 目の病気にはどのようなものがある?

 
現在やっかいな問題になっているのが、VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群といわれるコンピュータ、タブレット、スマートフォン、POSレジなどを長時間使うことによって起こる目やからだの不調を訴える病気です。

厚生労働省の調査では仕事でこれらを使っている人の7割近くが何らかの疲労や不快な症状を訴え、そのうち9割以上の人が「目の疲れ・痛み」を感じています。そして、最近急速に増えているのが、目の使い過ぎや室内の乾燥などによって起こる目が乾いてゴロゴロするドライアイです。

「ブルーライト」(青色光)という人の目が見ることのできる可視光線の中で一番波長が短いものが液晶画面からでております。このブルーライトは可視光線ではもっともエネルギーが強く目の奥の網膜まで届きやすいため、眼の疲れの原因となります。
そればかりか角膜を傷つける可能性があり、網膜の病気の1つである加齢黄斑変性などとの関わりを眼科の専門医が指摘しています。
そのため、ブルーライト対策の必要性はあちこちでさけばれています。このブルーライトを大幅にカットするメガネやパソコン画面にはる保護フィルムがヒット商品になっています。
 
誰もが老眼に!

 白内障、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症ーこの4つが中高年に多い視覚障害です。
視覚障害とはそのまま放置すると失明するか、あるいはメガネやコンタクトレンズなどを使っても一定以上の視力しか回復できない病気のことです。

白内障
 このなかで、一番よく知られているのが白内障です。レンズの水晶体が白く濁り、「まぶしくなる」「ものがかすむ」「二重、三重に見える」などの悩みを訴え、60歳以上では8割の人がかかっているといわれています。これは人工の水晶体(眼内レンズ)に取りかえる手術が一般におこわれています。

緑内障
 今、一番失明する危険性が高いのが緑内障です。初めの症状は見える範囲(視野)が狭くなったり、周辺が欠けたりするだけですが、じょじょに狭くなり、人やものにぶつかるようになります。
原因は眼球を球状にたもっている目のなかの圧力(眼圧)があがることで、視神経が圧迫を受けて起こります。
やっかいなことに、眼圧が正常でも起こり、この「正常眼圧緑内障」が一番多く、しかも自覚症状がないままにすすむことです。

加齢黄斑変性
 欧米での失明原因のトップが加齢黄斑変性です。日本でも次第にふえ、第4位になっています。
まさに加齢が原因です。網膜の中央部にあって視神経が集中している黄斑が萎縮するタイプとまわりに異常な血管が生じ、そこから血液がもれ、視神経を傷つける滲出タイプがあります。症状は視界の中央が見えにくくなることです。
萎縮タイプは進行がゆるやかですが、西洋医学では治療法がありません。
滲出タイプには血管新生を止める薬などが使われ,日本で世界初のIPS細胞による再生医療が試みられようとしています。

糖尿病網膜症
 4つ目の糖尿病網膜症は失明原因の第2位です。これはなによりも糖尿病にならないようにすることです。糖尿病になって15年たった患者さんの半数は発症するというデータがあります。

 
目の病気は予防できる?

どのような病気でも、「予防にまさる治療法」はありません。原因がわかれば、予防もできます。
高血圧、脂質異常、糖尿病など、さらにはガンさえ「生活習慣病」といわれるほど、多くの病気の原因のほとんどが「生活習慣」にあるのです。
一番悪いのはタバコです。その次が食事です。脂っこいもの、甘いもの、辛いもの、塩分の多いものをとりすぎることが悪いことは今や常識です。緑黄色野菜が目にいいことはわかっています。お酒の飲みすぎは論外です。
肉や油脂分の多いものが中心の「欧米式」の食生活が急速に日本でも進み、運動不足もかさなって肥満がふえています。昔から「暴飲暴食」をいさめて「腹八分目」といいます。まさに「快食快便」、そして適度な睡眠、これこそ理想の生活習慣なのです。

 目の病気を予防する方法のIつに中医学にはツボをマッサージする体操があります。
ツボと中医学の内臓(肝、心、脾、肺、腎の五臓)はつながっています。中国では子どもの近視予防のために小学1年生の授業で「目の体操」を教え、毎日休憩時間にこの目の体操を5分ほど行っています。目の体操はイラストのように顔の眉じりと目じりの中間より指1本分後ろにあるくぼみの。”太陽”というツボから指の腹で順々におさえます。Iつのツボを円を描くように8回もみ、遠回りに8回もみます。全部で7つのツボをおさえてもみます。最後におさえてもむツボは合谷という手の親指と人差し指の骨の付け根の間です。これを4回くり返します。もちろん、この他にも、目にいいツボはいくつかあります。それを覚えておすことも良いでしょう。

また、パソコンや目を使う仕事を1時間ほど続けたら、10分から15分は休憩し、その間に目の周りをマッサージ、軽く体操するだけでも目の疲れの回復には効果があります。

 
中医学が教える!

 中医学では「肝は目に竅(あな)を開ける」といいます。肝と目はつながりが深いのです。
この肝は西洋医学の「肝臓」とは少し違います。肝のおもな働きの1つは、気(生命エネルギー)の動きを調整して、血(血液)や津液(からだに必要な水分)の流れをコントロ‐ルしていることです。

もう1つの大きな働きは血液をたくわえ、からだに流れる血液の量を調節しています。
だから、肝の血が不足すると、目にも悪い影響をあたえ、視力低下をはじめ、いろいろな目の症状や病気がでてくるのです。

また、「涙は肝の液」といわれるように涙を適度に分泌して、目を潤い、保護しているのです。
もし、目にホコリやゴミなどの異物が入ったときは大量に涙を流して、目を清潔にして異物をとりのぞいています。
この大切な液がでにくい状態こそまさに目が乾燥し、ゴロゴロしたドライアイなのです。
 また、老化は腎虚といいましたが、腎の働きの1つは精(生命エネルギーの源)をたくわえ、発育、生長と生殖をコントロールしていることです。

この腎にたくわえられた精は髄をつくり、骨を丈夫にしています。髄の集まったところが脳です。
西洋医学と同じところもあります。おしっこなど水分代謝をコントロールしていることです。

 この腎の精が少なくなったのが、腎虚です。腎の精は親から受けついだ先天的なものと飲食物からつくられた後天的なものがあります。
この後天的な腎の精をつくるためには脾胃(胃や腸)の、すなわち消化吸収の働きが大切です。
後天の精をたくわえるのも腎の働きなのです。この腎の働きを食べ物や薬で補うことを「補腎」といいます。
補腎こそ老化を遅らせる中医学のアンチエイジング(抗老防衰)で、認知症の防止にもなるのです。

 さらに「肝腎同源」という言葉があるように、肝と腎は同時に補うことがより効果的です。
また、肝、心、脾、肺、腎の五臓が目とそれぞれつながっていると中医学では考えています。

 
杞菊地黄丸って、何?

「肝」と「腎」の働きの不足を補って、目の働きをよくする薬は中医学には数多くあります。
杞菊地黄丸、知柏地黄丸、明目地黄丸、滋腎明目湯、二至丸、桑麻丸、駐景丸、石斛夜光丸、左帰飲、左帰丸、
ハ味地黄丸、右帰飲、右帰丸などです。でも、日本では薬事法のきまりで、まだ杞菊地黄丸、知柏地黄丸、滋腎明目湯、洗肝明目湯、ハ味地黄丸しか販売がゆるされていません。
 この中で、日本で一番よく知られているのがハ味地黄丸です。夜、おしっこに何回もいく中高年の方々に人気の漢方薬です。

でも、ハ味地黄丸は「疲れやすくて、四肢が冷えやすい」方、すなわち、同じ腎虚でも腎陽虚の方に使う薬です。
「白内障にハ味地黄丸がいい」という雑誌の記事を読み、「疲れやすくて」も「手・顔がほてる」腎陰虚の方が1ケ月使いつづけました。すると、ますます顔がほてり、「のぼせ、どうき」がひどくなり、血圧も上がり、眼底出血をおこした例があります。
これは薬の副作用ではありません。漢方薬には「同病異治」という言葉があるように同じ病名でも、体質やからだの状態など、タイプ(証という)によって使う薬が違います。遂に病名が違っても治療する方法が同じ、「異病同治」という考え方があります。

 このハ味地黄丸からからだをあたためる作用が強い附子(キンポウゲ科カラトリカブトの根)と桂皮(肉桂、シナモン)の二味(二つの生薬)を取りのぞいたのが六味地黄丸です。
この六味地黄丸に目の働きをたかめる拘紀子(くこの実)と菊花(菊の花)を加えたものが杞菊地黄丸です。
だから、「手・顔がほてる」タイプの腎陰虚の方は八味地黄丸でなく、杞菊地黄丸を「飲む」べきだったのです。
中医学をしっかりと学んだ医師や薬剤師や登録販売者のアドバイスにしたがって自分のタイプに一番マッチした漢方薬を選んでおればと、くやまれてなりません。

 ちなみに、六味地黄丸は中国の北宋時代から子どもの腎虚、正しくは腎陰虚にもちいられてきた薬です。
先天的に腎精が不足した子どもは発育が遅れがちです。歯の発育、立ったり座ったりの行動、物覚え(知能)、
話し方などの遅れを改善するために使われたのが六味地黄丸です。
このように子どもの時から補腎薬を使う習慣をつけたいものです。今では、大人でも「手足のほてり、口の渇きがある」腎陰虚の方に用いられています。

 
杞菊地黄丸は目薬なのに、なぜ、のむ?

 中国漢方ではよく「のむ目薬」と言われますが、「目の薬なのに、なぜ、のむの?・」と疑問に思われる方が少なくないかもしれません。中国の病院でも目の病気に西洋薬の目薬を使うこともありますし、漢方薬を注射薬として点滴したり、ツボに鍼をうったりします。
また、目への直接注射ではなくイオン導入法という、薬をしみ込ませたガーゼを目にあて、電流を流して、薬を目にいれる方法もおこなわています。それによって、目の中の血涙を改善して視神経の萎縮などに効果をあげています。
 
だが、中医学では目の病気でもたんに最先端の機器で検査して「目の部分」だけをみるのでなく、目の症状と内臓の関係を「弁証論治」という独自の方法でしっかりと考え、特に患者さんの肝と腎の状態、まさに「からだ全体」から目をみて治療し、再び同じ病気にならないようにしているのです。だから、内臓に作用する薬をもちいて、からだ全体からなおすように治療をしているのです。
その代表的なものが「のむ目薬」といわれる、杞菊地黄丸なのです。

本知識の運用は、必ず東洋医学の研鑽を学んだ医師、薬剤師、登録販売者等の有資格者の指導監督下で
実践してください。